杜子春

仙人になりたいと熱望した杜子春
仙人は言った。
「厳しい修行に耐えたら仙人にしてやろう」
「これから修行が明けるまで
 何があっても口をきいてはいけない」

喜び勇んで杜子春は修行に励んだ。
大蛇や虎が襲い掛かっても、
決して声をあげず、ひたすら瞑想を続けた。
色々な鬼神が現れ、杜子春をいたぶるが、
杜子春はじっと耐えた。
鬼神は、地獄の閻魔大王の所へ杜子春を連れて行った。
「何故黙っているのか白状しろ!」
それでも黙っている杜子春
「おのれの父母が地獄におちているはずだ。連れて来い!」
「白状するまで父母を打て!」
杜子春の目の前で両親が鞭打たれる。
あぁ・・・
あまりの恐ろしさに目をふさいで耐えていると、
母の声が聞こえた。
「お前が幸せになれるなら、こんなことは何ともない。」
目を開けた杜子春の目に、
鬼達にさんざん打ち据えられてボロボロになっても、
慈愛に満ちた母のまなざしがあった。
「お母さん・・・!」
思わず声をあげる。
すると、目の前の地獄絵はウソのように消え去り、
杜子春は、元の市井に戻っていた。
仙人は言った
「母親が襲われても黙っているようでは
 人とはいえない。それでいいんだよ」

杜子春は、仙人になるのを諦め、
人として生きる道を選んだ。