最後の一葉

子供の頃に読んだお話です。
ある所に、貧乏な姉妹が住んでいました。
他に身寄りも無く、
たった二人でつつましく暮らしていました。
隣には、貧乏な画家の老人が住んでおり、
お互いに助け合って暮らしていました。
ある時、
姉が重い病にかかりました。
妹は一生懸命看病しますが、
良くなるどころか、悪くなる一方。
姉は、毎日ベッドに身を横たえながら、
「もうすぐ私は死ぬんだわ・・・」
と思うようになりました。
窓の外の壁にツタがあり、
それが秋風とともに、葉が1枚また1枚と落ちていきます。
「あのツタの葉がみんな落ちてしまった時、私も死ぬんだわ」
妹は励ましますが、姉の気力は落ちる一方。
病気は益々悪くなり、
ツタもどんどん葉を落としていきます。
そして、ある嵐の夜。
「こんなにすごい嵐では、ツタの葉はみんな落ちてしまったことでしょう・・」
翌朝、姉は気落ちしながら外を見ると、
ツタの葉が、
たった1枚残っているではありませんか。
「でも、明日にはきっと落ちてしまう。
 ツタと一緒に明日には私は死ぬんだわ」

でも、翌朝も、その翌朝も
その最後の1枚は落ちませんでした。
「ツタもあんなにがんばっているのだから、私もがんばって生きなければ」
姉は勇気がわいてきました。
そして、病気はすこしずつ良くなっていきました。
それと時を同じくして、
隣の老画家は病気になり、あっけなく死んでしまいました。
病気がよくなった姉は、
どうして、あの最後の1枚は落ちないのだろうと
不思議に思って、外に出てみました。
まだ、最後の1枚は残ったままです。
ツタをよく見てみると、
それは、壁に書かれた絵でした。
姉の病気に心を痛めた老画家が、
嵐の夜に壁に書いた絵だったのです。
その無理がたたって、画家は命を落としてしまったのでした。
「そうだったの、おじいさんが書いてくれた絵だったの・・」
姉は、老画家の暖かい心に触れ、
彼の分まで強く生きようと心に誓いました。